研究計画


本研究はVWF多量体の解析可能な3つの血栓止血学研究室と中核的循環器(内科、外科)・消化器診療科による多施設共同前向き研究です。超巨大分子であるVWF多量体の解析には高度な技術を要し、我が国で安定して解析できている研究室は限られています。それぞれの研究室は独自の方法で解析をしており、いずれの研究室でも同様の結果が出るよう本研究では2016年度中に解析法を標準化・定量化します。横断的解析によって、2017年度中に疾患毎に、aVWS合併頻度、aVWS合併時の出血頻度、出血危険度の高まるVWF高分子多量体欠損の程度、予後等を明らかにし、疾患毎に、診断基準・重症度分類を確立する計画です。その後、前向き縦断研究によって、より明確なデータを構築します。

1.登録症例と予定症例数:
登録はすでに開始しており、2018年3月31日まで行います。症例報告や小規模の臨床研究でaVWS合併例の存在が示唆されている以下の症例の登録を計画しています。
  • 大動脈弁狭窄症 500例(大動脈弁部最大圧較差30mmHg以上)
  • 肺高血圧症 500例(慢性血栓塞栓性肺高血圧症、肺動脈性肺高血圧症、心室中隔欠損症等の先天性心疾患に伴う肺高血圧等;三尖弁部の最大圧較差40mmHg以上)
  • 肥大型閉塞性心筋症 200例(左室内圧較差20mmHg以上)
  • 急性肺塞栓症 100例
  • 僧帽弁閉鎖不全症 500例(II度以上)
  • 機械的補助循環装着症例 計195例(PCPS 150例, 体外式補助人工心臓VAD 15例, 植込型補助人工心臓VAD 30例)
  • 先天性心疾患例 200例(ファロー四徴症等高ずり応力が想定される症例、成人例、手術等による修復例を含む)
  • 大動脈弁閉鎖不全症 200例(II度以上)
  • 大動脈弁・僧帽弁置換後弁周囲逆流症
  • 肺移植症例
  • 末梢動脈疾患(PAD等)
  • 大動脈疾患(大動脈瘤や大動脈解離等)
  • 小腸出血確定診断例※
  • ※循環器疾患に伴うaVWSでは消化管血管異形成からの出血が多く、血管異形成の30%は小腸に生じます。本研究では、明らかな腫瘍や炎症性腸疾患を認めない小腸出血例を登録し、同様の解析を行い、小腸出血におけるaVWSの寄与度を明らかにします。
  • 小腸出血疑い例

2.評価項目・評価時期:
一般的な病歴及び検査結果を診療録より得ます。病歴では特に消化管出血及び脳出血の既往に留意します。一般検査ではPT値やaPTT値、リストセチン刺激血小板凝集能(VWF活性;可能な施設)、出血時間、またHb値やFe、UIBC、便潜血等貧血関連所見に留意します。さらに心エコー検査を施行し大動脈弁部や三尖弁・僧帽弁部の最大流速や最狭窄部の面積等を評価します。奈良医大輸血部が担当してVWF切断酵素ADAMTS13の活性・VWF抗原量・活性等の血栓関連特殊解析を行います。

3.VWF多量体解析:
VWF多量体解析は登録時及び1年後に実施します。出血時や侵襲的治療時にはVWF多量体解析を頻回に行い、経時的変化を明らかにします。本研究でVWF多量体解析を担当する3施設間でも方法結果が異なり、若干結果にも影響します。そのため、3施設で2016年度中に、標準血漿を作成し、ゲル濃度や抗体の種類・濃度、解析血漿量等を統一することによって解析法を標準化します。さらに、考案したVWF高分子量多量体の定量法(JAT, 2015)を基に定量法を確立し、それぞれの研究室での解析結果を5%以内に収まるよう改良を重ね、登録症例の解析にあたります。VWF多量体解析では一度に解析できるサンプル数は限られ、また結果を得るまでに数日を要するので、3施設にてリサーチ・レジデントあるいは実験補助員を雇用・教育し、解析効率を上げます。

4.観察項目:
2019年8月まで原則として1年毎に臨床経過(出血イベント発症)を追跡し、その頻度を明らかにします。また侵襲的治療や出血性合併症時の経過や治療効果についても評価します。大出血は、ISTH基準に従い、小出血に関してはBARC基準に準拠します。

5.解析方法:
連結可能匿名化したデータをデータセンターである東北大学加齢研に集積し、外部と交通のないコンピュータで管理します。登録時の既往症と検査所見(特に多量体解析の結果)について横断的解析を、前向きに出血イベントを追跡する縦断的解析によって、対象循環器疾患毎に、aVWSをきたす頻度、aVWSをきたすそれぞれの循環器疾患重症度、aVWSから出血性合併症をきたす頻度等やきたしやすい状況を明らかにします。抗血栓療法の影響についても明らかにします。機械的補助循環においては機種毎にaVWSが生じる頻度や回転数等も明らかにします。



期待される効果