The 10th International Congress on Immunology (1998年11月インド,ニューデリー)
高井:
Allergy and hypersensitivity のシンポジウム
NovartisのC.H.HeusserはTherapeutic potential of anti-IgE antibodies in allergy and asthma. というタイトルで,Genentecと共同で開発した ヒト型抗IgEの臨床効果について報告した.これまで開発された抗IgEはマスト細胞上などのFceRIを架橋してしまい,活性化するためにallergicに作用するものであったが,彼等はnon-anaphylactogenic anti-IgE,つまりIgEのFceRI結合領域に対する抗体を選びだした.まずマウス抗IgEのモノクロ−ナル抗体を得,これがマウスのIgE PCAを阻害することを示した.これはこの抗体が好塩基球細胞上のFceRIに結合したIgEを脱離させる効果は無いものの,IgEに結合してFceRIとの結合を阻害できることを示している.またB細胞上のFceRIIに結合したIgEも認識できないことから,FceRII結合活性も阻害するらしい.マウスにこの抗体を投与するとIgEの血清レベルが低下し,IgE産生B細胞の数も低下した.アレルゲン特異的皮膚反応も低下した.次に彼等はこの抗体をヒト型化してIgG1クラスにしたところ,好塩基球からの顆粒放出活性の抑制が観察された.また花粉性鼻炎の発症時期に投与して予防効果を見たところ,発症抑制効果が観察された.また血清IgEレベルを下げ,90日間の投与でFceRIの好塩基球上のレベルが1〜3%に低下した.また喘息患者に長期間投与してからアレルゲンによる気道収縮性を調べたところ,即時相および遅発相のいずれにも治療効果が見られた.これは好酸球の浸潤の低下を伴っていた.
質問としてon-going の鼻炎に対してこの抗体が効果を有するのかどうかが質問され,現在検討中であり,現時点ではno dataであるとの返答があった.
免疫細胞の調節機構のシンポジウムでのMax D. Cooperの発表
Max D. Cooperは我々のラボでも独立に発見したPIRに関する最近の知見を報告した.それによるとPIR-Bは抑制型レセプターであり,120kDaの分子量を持つ糖タンパクであることをあらためて発表した.逆にPIR-Aは活性化型レセプターであり,FcRg鎖に依存的に発現すること,シグナル伝達はFcRg鎖によるものであると報告された.またB細胞のdevelopmentに伴って発現量の変化が起こり,脾臓B細胞よりも腹腔B-1細胞などに比較的多く発現されていることが報告された.特に本年4月の京都での発表から進展している様子は窺えなかったが,特異抗体を駆使している点は我々が現在進めない領域であった.
質問としてはHenry MetzgerからPIR-AがFcRb鎖と会合しているかどうかが聞かれ,現在そのようなデータは無いとの返答であった.我々のデータではFcRgのみならずFcRbとも会合しているので,この点,Max D. Cooperのラボではまだ実験されていないという印象を持った.また,やはりPIR-AとPIR-Bは常に同時に発現しているのかという質問が出され,前回と同様,その点がPaired Ig-like Receptorと命名した理由となっているとの返答があった.
NK細胞の制御機構に関するシンポジウム
A. MorettaおよびE. Vivierの座長によるシンポジウムであり,A. Moretta はKIR/KARというMHC class I分子を認識するレセプター群とは別に,特異性は不明ながらも種を超えて機能しうる,Natural Cytotoxicity Receptor (NCR) という新しい用語を用い,彼等の発見したp44 NCR,p46NCRの現状報告を行った.特にp46 NCRはやはりIgスーパーファミリーに属する新規分子であり,ヒトおよびマウスのNK細胞に特異的に発現し,特異性は広い活性化型レセプターであることを示した.マウスにも未知のNCRがまだ多数あるのではないかとの印象を持った.
E. Vivierの報告はKARに会合するKARAP/DAP12分子の解析が主であった.我々の行っているDAP12のマウス遺伝子構造や染色体マッピングも結果が報告された.
体調今ひとつで,早く帰りたいという顔をしています(ニューデリーの道ばたにて).
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