The 4th World Congress on Inflammation (1999年6月:パリ)
世界炎症学会議(フランス,パリ)およびオランダUtrecht大学訪問(6/26〜7/4/99)に関し,CRESTに報告した内容を抜粋しました(高井俊行).
1.パリ世界炎症会議報告
3年に1度,各国の炎症学関係学会が合同で開く,世界炎症学会議が本年はパリで6/27〜30に開催された.全体的な学会の印象は,米国の参加者がやや少なく,活発さが少し物足りない感が否めなかったが,最新の動向を探ることができ,有意義であった.たとえばJanssen Research Foundation, Belgiumの J Van Wauwe: Identification of R146225 as a novel orally active inhibitory of interlekin-5 protein and mRNA production.では, 多環芳香族化合物のR146225がIL-5特異的に産生抑制し,逆にIFN-gammaは促進されることがヒト抹消血をPHA刺激したブラストの系およびマウス脾臓細胞の系でナノモラーオーダーで約50%程度まで抑制されることが示された.これはmRNAの合成段階での阻害であることがPCRから示唆された(これについては合成か安定化かという質問が出されたが,ブラスト化の際には新規合成されるが,これが抑えられるから合成阻害であろうというコメント).面白いことにIFN-gamma のmRNAは逆に合成促進が示された.IL-2,IL-4,IL-13に関しては影響が見られなかった.また,in vivoで2.5 mg/kgの一回経口投与で抗CD3抗体で誘導されるIL-5の血清中濃度の亢進が抑制された.質問では一回投与で効果が最大になる濃度はデータに示された2.5 mg/kgなのかという疑問に対し,あのデータが最大効果が得られた濃度だという返答があった.また,私の口演の前後はFcレセプターとリウマチ関節炎およびコラーゲン誘導関節炎(CIA)に関する演題が集められ,オランダのBergのグループは活性化型Fcレセプターの発表,私は抑制性FcgRIIBについて発表するプログラムとなった.Role of Fc g chain in inflammation and cartilage damage during murine experimental antigen-inducedn arthritis. van Lent, --- and van den Bergらは関節炎モデルマウスを使って遺伝子治療の効果判定をやっているグループだが,FcRgノックアウトを使って抗原誘導関節炎を調べた.メチル化BSAをCFAおよびIFABoostののち(1週間開ける),2週後にメチル化BSAを関節腔内に打ち込み,炎症を誘発した.その結果,FcRg欠損の場合,抗体産生には影響がないものの関節炎の発症が極端に弱まった.彼らはFcRgが関節炎の慢性化と増悪に関与していると結論したが,CIAの系統依存性を回避する方法としてとった抗原誘導関節炎と実際の自己免疫性関節炎のメカニズムの異同が問題になろう.次にExpression of FcgRII/III by macrophages of mice susceptible for collagen type II arthritis compared to nonsusceptible strains: consequences for their reaction to immune complexes. Bloom --- and van den Berg らはFcgRII/IIIの発現が感受性マウスと非感受性マウスの間で差があるのか否かを調べ,2.4G2染色で見るかぎり,単球では差が無く,腹腔マクロファージ上ではDBA/1でFcgRII/IIIの発現がおよそ倍に上がっていることを見いだした.それに伴い,刺激時のIL-1産生量がずいぶんと上昇していることを示した.質問ではIIとIIIの発現をどのように見分けているのかを私が聞いたが,PCRで現在調べているとのことだった.そしてFcgRIIB欠損マウスにおけるcollagen-induced arthritisについての私の発表では,Bergたちの研究報告を,図らずも補完する形となったが,FcgRIIBがCIAに対して抑制的に機能していることを強調した.
オランダUtrecht大学訪問とセミナー:ユトレヒトはアムステルダムから列車で30分ほどのところにある,結構にぎやかな街.ユトレヒト大学病院の小児病棟は,中庭に子供が喜びそうな怪獣の彫刻やオブジェがあり,美しく,行き届いた病院.広々としたラボに最新設備の機器が並び,我々のラボも機器の点では負けていないがこの広さはどのように確保したらいいのか,うらやましい限り.Jan Winkelのラボで少人数を前に,自分の研究紹介をおこなった.アナフィラキシーのデータに関しては議論があり,FceRIaノックアウトではIgGアナフィラキシーは起こるのにIgEアナフィラキシーは起こらないがどう説明するかというSjef Verbeekの質問には,IgGとIgEのシステムは効率が違う可能性があるという説明.その他,抗体の産生が上昇することに関し,affinity maturationなどを検討したかという質問があり,germinal centerの様子を今後検討してみると答えた.
夜の10時ごろまで明るいユトレヒトでは週末と夜がたいへんにぎやかで,短い夏を楽しんでいた.国土は狭いがゆったりとした生活をしている様子が印象的であった.
宿の近くのエッフェル塔の根元
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