第59回日本アレルギー学会秋季学術大会 

2009年10月29日〜31日 秋田市 

秋田は3年前に自転車で通りすがっただけでいつかまた訪れる機会を探していた。今回は学会参加の機会に恵まれ,初めて秋田新幹線「こまち号」に乗って秋田駅に降り立った。

この学会ではとりわけ好酸球とアレルギー,炎症との関係を報告したワークショップ,シンポジウムが多い印象があり,たいへん興味深く勉強させて頂いた。

 当研究室の成果であるマスト細胞上のPIR-Bとアレルギーとの関係についての研究報告をワークショップ4「アレルギーの感作成立=発症なのか?」にて行った。活発な質疑応答により研究の方向性に関する貴重な示唆を得たが,たとえば樹状細胞などでPIR-Bが発現していたら抗原提示にも抑制的に機能しているのか,とか,アロのMHCでいくらか結合親和性が異なるのであれば強い結合,弱い結合で制御の強さが異なるのか,また他に真のリンガンドが無いのか,など貴重な指摘をいただいた。

 Adnan Custovic先生のエネルギッシュな教育講演はとりわけ印象深かった。これは2002年のNEJMに掲載された有名なエンドトキシンとアレルギー発症率との逆相関に関する研究について考察を加え,自身らの研究を紹介したものだ。以下に概略を紹介する。

 『エストニアではエンドトキシンの量とアレルギーには相関は見られていない。さらに,キプロスでは逆に正の相関が見られた。このようにあるひとつの現象どうしの連関が,他の地域になると全く異なることがよくある。したがって,猫を飼うより犬がいいとか,猫は何匹までアレルギーに有効かなど,多様な解析報告があって論文を読めば読むほど混乱する。これはある意味当然のことであり,しっかりした分子的根拠と応答との連関を調べる必要がある。たとえばCD14のバリアントと血中IgEレベルの報告があるが,CD14バリアントをアレルギーのリスクファクターとする場合,ツーソンやサウスダコタ,ドイツでは全く異なった報告がある。またTLR2のバリアントでも多様な報告が見られる。さらに,エンドトキシンの量とアレルギーとをリンクさせる場合,バリアントのアレルごとに応答が異なることがわかった。エンドトキシン量と逆相関するバリアントもあれば,全く相関の見られないバリアントのアレルがあり,ヘテロの組み合わせでは中間的な相関傾向が見られた。デイケアセンターに子供を預けるのがいいとされるがバリアントによってはかえってアレルギーにとって逆効果である結果も得ている。』

 このように複雑な要因が絡み合うアレルギーの場合,各個の分子,たとえばCD14やTLR2のバリアントとエンドトキシン暴露量との組み合わせで調査するべきであり,エンドトキシン量が少ない=アレルギーの発症率が高い,という単純な図式を描くことは注意が必要である。

千秋公園前の池