2.ニューヨーク到着その後 空港にはそれまで事あるごとにお世話になっている大学院時代の先輩ご夫妻が出迎えて下さった。到着出口で待っていた先輩曰く「どこの出稼ぎ労働者の集団がぞろぞろ大勢で出て来たのかと思ったら,その中に高井君たちがいた」とのこと。 私たちにとってはまさに地獄に仏とはこのことで,氷点下の気温で頬がピリピリ刺すように痛い駐車場から疲れきった家族を乗せてクルマで一路,夜のマンハッタン,スローンケタリング研究所のゲストハウスまで連れて行って下さった。 ゲストハウスはたいへん清潔で広く,居心地がいい。近くのスーパーで買い物の仕方を奥様に教えていただいてさっそく明朝のパンなどを買い出し。このようにしてニューヨーク生活は始まった。 ゲストハウスに居られるのは1週間だけで,その間にスローンの所有するアパートに移住しなければならない。この手続きや鍵の受け渡しやらで慣れない英語でのやりとりで疲れながらもなんとか荷物を移動させた。ところがこのボロアパートの1階にある部屋は,聞きしに勝るニューヨークのアパートの典型で,家賃は1000ドルもするのに,潜水艦のように暗く,窓には刑務所のように鉄格子が。女房はゲストハウスが良過ぎたものだからいっぺんに機嫌悪くなり,またアパート周辺のそこかしこにホームレスがごろごろしているから怖がって外出もしたがらなくなった。私のほうは結構,職場で気分転換できるせいか,街歩きも愉しく,ホームレスはホームレスでニューヨークの名物として見ぬふりしながら見て歩いていた。 |
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