その12 ベルツ賞 | ||||
先生はドイツ留学で磨きがかかったと思われる,ドイツ人も舌を巻くほどのうまさのドイツ語遣いだ。ドイツ人でも間違う男性名詞,女性名詞を使い分けるらしい。研究室に留学しているドイツの若者が実験をサボっていると,日本人に対してはもちろん日本語で,だが,彼にはドイツ語ですごい剣幕で叱る。はたで聞いていても内容はよく解らないが。。。 先生がある年,ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社創設の,栄誉あるベルツ賞を受賞された。 記念メダルがもらえるらしい。そのメダルにはLeben heist Arbeitenと刻印されているそうだ。 先生はドイツ語を習い始めの秘書に,『何て書いてあるか分かるか』とメダルを見せて訊かれた。秘書は辞書を調べて,「生きる事ははたらく事だ」と応えると,先生は『その通りやっ!』と言って我が意を得たりとばかり,上機嫌だったという。 この対極に「C’est la vie」(仏: this is my life)があるのか,人生を謳歌するフランス式人生と,働くこと即人生のドイツ式,先生は語学もそうだったが生き方すべて後者だったようだ。 |
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