その14 こぼれ話:冷やしコーヒー | ||||
当時の講座には3階にある第1,第2研究室(1・2研と呼ばれる)と1階の7・8研,そして2階の3研がある。それぞれに住人がいて,私の居た3研ではよくぞこんな性格の穏やかな愉快なひとたちが集まったものだと思うくらい,いい方々に囲まれて実験していた。
さて,世の中にはいろいろな人が居て,こんな3研にも中には困ったさんも配属される。このひとは、困ったことにずいぶん激怒しやすい,今風に言えばキレやすい変わり者で,キレると手が付けられない。わたしたちは先生の機嫌を伺うのとはややニュアンスが異なるが,ある期間,そのひとの機嫌を窺う毎日となった。 ある日,そのひとは,幸い機嫌よく,いそいそと何かしている。よく見ると,大腸菌を培養するための10リットルの大きなフラスコに漏斗と濾紙をセットして何やら黒い液体を濾している。聞くと,コーヒーだ,とのこと。しまいに10Lフラスコいっぱいにコーヒーを作り,実験用の氷でフラスコごと冷やし,我々に「さあ召し上がれ」,と言う。・・・優しい。 我々も,優しいので,その大腸菌用フラスコいっぱいに作られた冷やしコーヒーをそのひとからマイカップに注いでもらい,うまいうまいと言いながら,飲んだ。 |
||||