23. 『実験で鍛えろ』

 『研究者は24時間研究者ですから寝る以外は実験せなあかんのですわ。盆も正月休みもありませんね。風邪を引くのはたるんでる証拠ですわ。あんたたちは実験で鍛えなあきませんね。実験でからだ鍛えてたら風邪なんか引きませんわ。』

 もうすぐペーパーワークに入るとか,大事なキーになる実験結果がもうすぐ出そうだ,というようなひと以外は,土曜日曜はいちおうお休みモードで遅めに出勤する。しかしお盆休みは1日だけ,正月休みは1月1日のみである。

 『外国の連中は正月など休みませんね。1日だけですわ。日本だけですわ,3日も4日も休むのは。』(クリスマス休暇はどう考えればいいか,とは我々は敢えてツッコミを入れなかった。)

 お休みの日でも,先生の出勤時間帯に研究室に居なければ下宿に電話がかかってくる。下宿(ふつうの家の2階を間借り)で寝ていると,階下の大家さんから,「高井さ〜ん,Nさんというひとから電話ですよ〜」と呼ばれる。しかも朝の6時だ。申し訳なさそうに大家さんに礼を言い,すぐ降りて受話器を取ると,

『ああ,Nですけど,あんたあれ,昨日の晩,ちゃんとやったんかいな。』

というような類いの電話だ。早朝も深夜も関係なくかかってくるので,電話を取り次いでくれる大家さんにとってはいい迷惑である。ずいぶんご迷惑をおかけしました,ごめんなさい。