24.「バッファー作って下さい」 その当時,研究室には3人ほど,女性の大学院生がおられた。先生にこっぴどく叱られて具合が悪くなることが多い男子大学院生たちと違って,女性陣は強い。そのなかの一人,Aさんは3研の住人で,実にてきぱきと実験をされるかっこいい先輩だ。 先生は,『研究者は24時間実験せなあかん』と言っているような方なので,3階の教授室で雑務で忙しくしていても,その手が空くと,2階の3研まで降りて来て,そのとき佳境に入りつつある実験を手伝うことが,私が大学院に入る少し前まであったそうだ。制限酵素でDNAを切って組み換えたり,といった結構経験の要る仕事だ。逆に言えば慣れないひとがこのようなことをやると時間ばかり使って足手まといになる。 ある日,先生が事務仕事を終えて降りて来て『何か手伝うことないか?』,と忙しくしているAさんに聞いた。するとAさんはきっぱり,「じゃ,バッファー(実験に使う塩類溶液)作って下さい。」と言った。 先生は困惑して『もっと大事な仕事はないんか?』と言われた。 ・・・その後,実際にバッファーを作られたのかどうかまでは伝聞されていないので分からない。 |
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