ハーベイ・レクチャー Harvey Lectureという本には,著名な学者が集大成とも言えるような総説を発表する。 先生は,日本の雑誌などから総説執筆の依頼が来ても,ことごとく,断っていた。そんなことをしているヒマがあるなら英文で原著論文を書け,というのが信条だから当然である。 そんな先生でも,外国の著名な総説誌から依頼があると引き受けておられたようで,そのうちのひとつがHarvey Lectureだ。 普段,原著論文を書くときは我々にデスマッチを強いるが,総説の場合には自己デスマッチだ。しかも周囲を巻き込んでの。周囲の意見を訊きながら,徹底的に何度も書き直されていた。そういうときに独り言のように繰り返し私たちに言っていた。『Harvey Lectureにはそのあとノーベル賞を取るようなひとしか書きませんね。』 |
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