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加齢・老年病科院内講師の富田尚希先生の論文が日本老年医学会英文誌Geriatrics & Gerontology Internationalに掲載となりました。

2019/01/04

プロブレムリストは高齢者総合的機能評価の要約となりえるか?
―日本老年医学会認定老年病専門医を対象としたプロブレムリストの記載に関する全国アンケート調査―

 高齢者や複数の慢性疾患を抱えた患者では、ケアの断片化を防ぐため主訴・主病に限定されず、広く包括的に情報を収集することが望まれる。実際の包括的な情報収集は「高齢者総合的機能評価(CGA)」で行われ、複数の指標や尺度が評価結果として出力されるが、CGAの結果出力される複数の評価結果のまとめ方やその提示の仕方はバリエーションに富んでおり、どのように情報を共有するかについて、コンセンサスの得られた唯一の方法は存在しない。従って、CGAの評価結果を有効に使うには、結果をいかにまとめ、共有するか検討する必要がある。

 「プロブレムリスト」は、診療録を効果的にまとめ・共有するProblem oriented system (POS)の中心で、多職種連携が求められるCGAの情報の効果的な要約・共有ツールとなる。しかし、昨今問題点の数の増加と複雑化により、リストアップされるプロブレムが断片化される傾向にある。CGAを実践している老年病専門医が作成しているプロブレムリストを検討することを通じ、プロブレムリストのCGA情報の要約・共有ツールとしての課題を明らかにすることを目的として本研究を行った。

 本研究は横断研究で、2015年11月時点で日本老年医学会に登録されている老年病専門医1439名全員を対象に、プロブレムリストの記載状況についての自記式調査票を送付し、FAXで回答いただく方法で行った。また実際に記載するかどうかの意見が分かれることが多い症候名、状態名をそれぞれ20ずつ上げ、それらをリストに記載するかどうか、その可能性について回答を求める質問を設け、回答結果の検討から背景にある潜在因子を探索的因子分析にて検討した。結果は以下のとおりである。

1.疾患名では記載するプロブレムが自分の担当分野に限定される傾向が強いことが記載漏れの原因として最も重要とする回答が多かった。
2.症候名、状態名については、どの程度のものをリストアップすべきか決まっていないことと、プロブレム名として標準化されていないことが、記載漏れの原因として最も重要とする回答が多かった。
3.症候名と状態名を比較すると、状態名のプロブレムリストへの記載頻度は症候名ほど高くない。
4.症候名では、明らかな障害のレベルにある症候については身体的か精神的かを問わずプロブレムリストに高頻度に記載されている。
5.身体障害の前駆状態(リスク状態)に関する記載頻度には大きなばらつきがある。
6.精神障害の前駆状態(リスク状態)についても同様であるが、身体障害よりも記載頻度のばらつきは小さい。
7.状態名では、潜在的に生活のケアが必要な状態についての記載のばらつきがみられた。またそれとは独立して、薬物療法の適正さに関する記載のばらつきが指摘された。特に薬物療法管理補助要は要注意である。
8.症候名のリストアップの選好に影響する潜在因子として最も影響力が強いと推測される因子は、移動能力(歩行障害)の状態であり、次に老年症候群、精神状態、感覚障害(視聴覚機能)であると結論される。
9.状態名のリストアップの選好に影響する潜在因子として最も影響力が強いと推測される因子は、サポートが不十分であると一般的に考えられる状態であり、その中でも薬剤管理の補助の必要性は独立してその次に来る因子として考えられ、PIM(Potentially inappropriate medication for elderly;高齢者に慎重な投与が必要な薬剤)を用いていること、要支援・要介護状態であることが続くと結論された。

 以上、本研究からCGAの結果を要約・共有するツールとしてプロブレムリストを用いる際には、因子分析の潜在因子として挙げられた因子の記載漏れがないようにする対策を検討することの重要性が示唆された。(Tomita N, Kojima T, Ishiki A, Ueda J, Numasaki M, Okinaga S, Akishita M, Arai H. Geriatr Gerontol Int. 2018 Dec 16. doi: 10.1111/ggi.13574. [Epub ahead of print])