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漢方研究

漢方は、長い歴史を有し、その作用に対して様々な研究が行われてきたが、その組み合わせにより作用・効能は無限であり、単一の生薬では作用が認められなくても、それらを組み合わせることにより薬効が認められるものも珍しくない。また、漢方は経験的に知られた基準に従って処方されるが、これらを薬理学的に解析することにより、実に理に適った薬理作用を有していることもしばしば見受けられる。このことから、漢方・生薬は現在未だ有効な薬剤が開発されていない分野にとって、重要なシーズとなりえることが期待される。

例えば、アルツハイマー病の周辺症状を改善することで最近話題になっている「抑肝散」の構成生薬である『釣藤鈎』(チョウトウコウ)に、我々はアルツハイマー病の原因物質の一つであるアミロイド蛋白の凝集を制御する作用があることを見出した。この生薬をアルツハイマー病トランスジェニックマウスに経口摂取させることにより、脳内アミロイド蛋白蓄積を減少させ、記憶力低下を改善することが確認された。また、生薬『牡丹皮』においても『釣藤鈎』と同様に、in vitroおよびin vivoでアミロイド蛋白凝集制御作用を有することを見出したが、本生薬の有効成分として、1,2,3,4,6-penta-O-galloyl-β-D-glucopyranosideを同定した。このように、有効性の認められた生薬から新たな薬理学的ツールを見出すことも、本研究分野の重要な要素の一つである。この他にも当研究室の探索的研究においても、アルツハイマー病に有効な作用を示した漢方・生薬およびそれらの有効成分が数多く見つかってきている。対症療法薬のみで今なお有効な根本治療薬が開発されていないアルツハイマー病にとっては、漢方・生薬は宝の山であると思える。

蒼朮(ソウジュツ) 茯苓(ブクリョウ) 釣藤鈎(チョウトウコウ)
当帰(トウキ) 柴胡(サイコ) 甘草(カンゾウ)

文献

1. Iwasaki K, Satoh-Nakagawa T, Maruyama M, Monma Y, Nemoto M, Tomita N, Tanji H, Fujiwara H, Seki T, Fujii M, Arai H, Sasaki H. A Randomized Observer-Blind Controlled Trial of a Traditional Chinese Medicine, Yi-Gan San, on Behavioral and Psychological Symptoms and Activities of Daily Living in Dementia Patients. J. Clin. Psychiatry 66:248-252, 2005.

2. Maruyama M Tomita N, Iwasaki K, Mari Ootsuki, Matsui T, Nemoto M, Okamura N, Higuchi M, Tusitsui M, Suzuki T, Seki T, Kaneta T, Furukawa K, Arai H. et al. Benefits of combining donepezil plus traditional Japanese herbal medicine on cognition and brain perfusion in Alzheimer’s disease. A 12-week observer-blind donepezil-menotherapy controlled trial. J. Am. Geriatr. Soc. 2006;54:869-871.

3. Fujiwara H, Takayama S, Iwasaki K, Tabuchi M, Yamaguchi T, Sekiguchi K, Ikarashi Y, Kudo Y, Kase Y, Arai H, Yaegashi N. Yokukansan, a traditional Japanese medicine, ameliorates memory disturbance and abnormal social interaction with anti-aggregation effect of cerebral amyloid β proteins in amyloid precursor protein transgenic mice.. Neuroscience. 2011 ;180:305-13.