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摂食・嚥下研究

「食べる」という行為は、すべての生物体において、もっとも根源的な行為である。私どもが何気なく行っている動作を担っているのは、脳である。

「物を飲み込む」は、大きく口腔相・咽頭相・食道相などに分けられるが、高次脳機能障害などで、食物を前にしても口すらあけないような前口腔相の障害が認められたり、また、主に脳血管障害が原因で、咽頭相の障害により、うまく食道に送り込むことができずに、食道入口部と隣接した気管のほうに、誤嚥することが多く認められる。

当科では、これまで、高齢者誤嚥のメカニズム(Ref 1 )を解明し,咽頭相の誤嚥を予防する薬物医療を明らかにし、この分野をリードしてきた。

この数年は、さらに、「誤嚥をしないで安全に食する方法の確立」をテーマに、数々の論文を発表している(Ref 2-5). これらの成果は、産学連携のもと、特許申請および取得をし、すでに、黒コショウ芳香含有シート(商品名 ブラックペッパーアロマパッチ:ネイチャーテクノロジー:2007年春)、メンソール含有ゼリー(商品名 エンゲリードミント味:大塚製薬工場:2007年夏)を世に送り出している。

数年前より、胃瘻造設を行った場合と行わない場合の生存率の差が不明瞭な結果が相次いで発表されてきている(海外研究)。経口摂食のみで一日の必要栄養量を摂取できれば、幸いなことであるが、摂取できないときは、点滴による栄養補給をするか、胃瘻造設を行うなどして、必要量を摂取するしか方法がない。しかし、誤嚥を起こす可能性のある高齢者の場合は、急性期の病態が過ぎたら、私どもの提唱する「誤嚥をしないで安全に食する方法」で早期介入することにより、経口摂食を維持できる、または、例え、胃瘻造設を行ったとしても「楽しみとしての摂食」を維持できる可能性があると考えている。

「食べる」という、本質的な行為を、最期まで維持できるよう、科学的な摂食・嚥下能力改善法の確立を目指している。

文献

1.Yamaya M et al. J Am Geriatr Soc 2001;49:85-90
2,Watando A et al. J Am Geriatr Soc 2004;52:2143-2144
3.Ebihara T et al. J Am Geriatr Soc 2004;53:824-828
4.Ebihara T et al. J Am Geriatr Soc 2006;54:1401-1406
5.Ebihara T et al. Br. J Clin Pharmacol. 2006;62:369-371