東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野 東北大学病院 加齢核医学科

更新日2011.9.1
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研 究

これまでの研究

(1) ヒト脳の加齢に関する画像医学的研究
 福田をプロジェクトリーダーとして実施した青葉脳画像リサーチセンター事業(H10-13年度)で健常な日本人1,600人の脳MRI画像と背景データと合わせて脳画像データベースを構築した。その後の複数のプロジェクトを通じて脳画像データを追加し現在2,600例に達している。本データベースは国内では唯一、世界でも有数の規模である。このデータベースの画像解析を通じて、これまで以下のことを明らかにして、論文を公表してきた。
1) 日本人とドイツ人若年者の脳形態を比較した結果、両者の脳の縦横比が異なること、それぞれ、脳回構造の複雑さで表現される、発達している脳領野が異なること。
2) 加齢に伴って脳灰白質容積は直線的に減少するが白質容積は50歳代をピークとする上に凸な曲線を示すこと。
3) 年齢、高血圧、飲酒量、うつ状態, 肥満が、灰白質量と負の相関を示すこと、すなわち、これらの因子は灰白質減少(脳萎縮)を加速する因子であること。
4) 7年間の間隔で同一人を2回撮像した精度・感度の高い縦断研究により、灰白質量の減少に男女差があることを海良かにした。すなわち男性は20歳代からほぼ直線的に減少するのに対して、女性では50歳代まで男性より緩やかに減少しそれ以後は男性と同じ傾きで減少すること。また白質容積は男女とも40-50才台まで緩やかに増加し、その後減少すること。
5) 脳白質の虚血性変化の程度は脳灰白質量減少の程度と相関すること。
6) 縦断研究により、一回目に測定した特定部位の脳局所の灰白質量から、その後の脳全体の灰白質減少(萎縮)を予測できること。
7) 脳局所灰白質量を指標としてグラフ情報理論に基づくネットワーク構造解析を行った。その結果、若年、中年、老年の3群に分けた時、それぞれのグループはいずれもsmall worldの特性を示すこと、small worldnessのパラメータは加齢に伴って変化することを明らかにした。

(2) PET癌診断用の新規ポジトロン標識化合物の開発
 18F-フルオロデオキシグルコース(18F-FDG)を用いたPETによるがん診断は、いまやがん診療に欠かせない画像診断法となっている。18F-FDGによるPET癌診断法は福田が1982年にラット転移性肝癌のモデルを用いて、その有用性を世界で初めて画像として示した論文に端を発している。実はこの論文では、マンノースのアナログである18F-フルオロデオキシマンノース(18F-FDM)も18F-FDGと同様にがん診断に有用であることを示している。すなわち、18F-FDGと18F-FDMの腫瘍(ラット肝癌AH109A)への取り込みは、ほぼ同等であったが、脳への取り込みが約1/3少ないこと、血液クリアランスが18F-FDMの方が早いことである。一方、現在汎用されている18F-FDGは、がんに集積すると同時に脳へ高集積を示すため脳腫瘍の診断には適していない。また、脳以外の正常組織でも集積の高い部位があること、炎症巣にも集積するなどの欠点がある。18F-FDMは腫瘍への集積が同等で脳や小腸、筋肉への集積が少ないこと、血液からのクリアランスが早いことにより、18F-FDGよりも優れたPETがん診断薬となる可能性がある。しかし、当時の合成法では18F-FDMの合成の収率は極めて低く、臨床研究を開始するにはいたらなかった。その後26年が経過しして、標識合成法の大きな進歩があった。そこで、サイクロトロンRIセンターと共同で、新たな標識前駆物質の開発を行い、18F-FDMを高収率・高純度で標識合成することに成功した(H19~H20)。また、担癌動物を用いて、腫瘍および正常組織の18F-FDM分布を測定した所、27年前に示した特徴が再現された。現在、臨床研究開始に向けて準備を行っている所である。
 また、18F-FDM以外にも癌診断に有望な標識化合物があり、環境が整えば臨床実用化をめざす予定である。

(3) 大学病院加齢核医学科における診療業務
 大学病院では、PETおよび一般核医学検査を担当している。FDG-PET/CTによる検査は癌の診療を行う上で不可欠の検査となっており、年々需要が増大している。PET装置が1台であった2008年までは年間2800件程度の検査を行っていたが、検査待ち日数が三週間程度であった。2009年4月からPET2台体制で検査を行うようになると、待ち時間は大幅に短縮して臨床科の要望に応えられるようになった。また、検査件数は3900件に急増した。本年度は年間4,000件を超える見込みである。一般核医学は、PETの導入で減少傾向にあるが、2009年は3500件程度の検査を行っており、診療各科の要望に応えている。これらの診療業務は、過大な負担となっている。
 PET検査は、サイクロトロン運転(放射線部技師)、放射薬剤合成・検定・自動注射装置への装填(薬剤部薬剤師)、自動注入装置によるFDGの注射・患者の誘導・看護(放射線部看護師)、PET装置の運転・画像データ処理・保存(放射線部技師)など、多くのシステムと人材の協調が必要で、診療科長(福田)、医局長が全体を掌握しながら運用している。


今後の研究の方向性

 基本的には、現在進行中の研究をさらに発展させる。また、臨床については、「サイエンスのわかる臨床医の育成」をモットーとしており、この方針に則って、診療・研究を展開させる。具体的研究プロジェクトは以下の通りである。

(1) ヒト脳の発達と加齢に関する画像医学的研究
 認知機能発達寄附研究部門の瀧らを中心に6歳から18歳までの子供の脳MRIを収集した。袖手した画像はT1協調画像(形態画像)に加えて、拡散強調画像、血流画像、機能的MRI画像など他種類のデータを含んでいる。これらの画像を用いて、脳の発達と加齢に関する共同研究を行う。具体的には、
1) 脳灰白質量あるいは脳灰白質厚さを指標とする脳形態の発達・加齢に関する研究―従来の研究を発展させるとともに、脳萎縮の危険因子解明を通じて、最終的には脳萎縮の予防医学確立に繋げる。
2) グラフ理論(情報理論)にもとづくヒト脳のネットワーク構造解析を行う。最近、灰白質量・皮質厚さなどの脳形態情報や機能的MRIなどの機能情報を用いて解析する、情報理論に基づくヒト脳の脳局所間連関(ネットワーク)研究を行っている。この研究は、まだ欧米の一部のトップグループが行っているに過ぎず、極めて斬新かつ最先端のテーマである。福田教室では、2年前から本解析の方法論を導入し、大規模脳MRIデータベースを用いて、ネットワーク解析研究を開始した。これまで、ネットワークパターンの年代差や性差について結果を得ており、二つの論文を投稿中である。本研究を行っているのは、国内では福田グループのみであり、新規性・独自性の高い研究であり、最終的には脳科学と情報科学の統合をめざしている。2年前から導入している方法論を用いて、脳MRIデータベースを対象として脳の情報伝達の効率(small worldness)、情報集中ハブの特性(node betweenness)、包括的モジュール構造などのネットワークパラメータを計算し、ヒト脳の包括的、統合的ネットワーク構造を明らかにする。
今後、情報科学研究科、木下教授との共同研究を考えている。また、これらの脳科学研究の成果を脳ドックなどへ応用する具体的方法論を検討し、社会に還元する。

(2) PET癌診断用の新規ポジトロン標識化合物の開発
1)これまで開発してきた18F-FDMの臨床応用を開始するための、研究を行う
・ 自動合成装置の開発(CYRIC)-small volumeでの反応系、分離・精製系の開発
・ 有用性の再確認―動物用のPETを用いて、正常組織および腫瘍における18F-FDMの動態を確認するとともに、炎症性疾患への集積を検討して、18F-FDGとの比較を行う。
2)がんの熱中性子捕捉治療(BNCT)において不可欠な18F-10B-パラボロノフェニルアラニン(BPA)の高収率・高純度の新規合成法の開発
 方法論的に極めて、ハードルが高くその実現がかなり困難である。挑戦的萌芽研究に申請中。

(3) 大学病院加齢核医学科における診療業務
 本年度は4,000件/年を目標とするとともに、症例をまとめてPET癌診断に関する論文を作成できるよう努力する。留学から一人帰国するので、現在の非人間的な勤務体制は解消する見込み。
機能画像医学業績リスト(最近4年間)


 
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