Message of JSAO2010

ごあいさつ

第48回日本人工臓器学会大会
大会長 山家智之

 日清・日露では辛うじて勝ち? 大東亜戦争で大敗を喫し、占領まで経験し日本の国柄は、明治の時代と比較をすれば、同じ国とは思えないほど大きな変化を急速に遂げてきたと言われております。戊辰戦争で滅んだはずの奥羽越列藩同盟の盟主であった仙台城の本丸懸造から、ビルが立ち並び新幹線が走り飛行機が飛ぶ城下町を眺めることができる未来が来る・・・と、予測した伊達藩士は一人もいなかったことは間違いないでしょう。
 ところが日本がこれだけ変化しても、医療制度は、百年以上進化していない! と言った批判があります。帝国大学を中心に医師が養成され、大学の医局で勉強と研究を重ね、やがては教授に?院長に? あるいは、末は博士か? 大臣か?・・・そんなキャリアパス? は、そう。ある意味、現在の官僚制度に通じるものがあります。日本の官僚制度は、大化の改新の律令制度にまで遡ることができる長い長い歴史と伝統としがらみを持つと言う説もあります。
 そう、もしかすると私たち医療人・医学研究者は、もう千年以上。システムの上では一歩も進歩していないのかもしれません。私が個人的に尊敬する東大の井街先生は「人工臓器の学会を、出世のステップだと勘違いしている会長がいる!」と、よく怒っておられました。名門医学部を卒業して伝統ある外科学教室に入局、手術を覚え、助手になって留学。外国の機器を使って成果を上げて帰国し、運が良ければ教授に。人工臓器の会長になり、これをステップに定年前に大きな外科の学会の会長。定年後はどっかの院長に天下り? と、考えると、官僚さんのキャリアパスとあまり変わりありません。そこで、昔は、人工臓器の学会をすると、偉い先生方だけを集めて豪華な宴席を設け、次の大きな学会の準備と立候補などに向けた接待をする・・・大きな学会へのステップ?と、言う悪しき習慣があったとのお話を伺っています。
もう、そういうのは止めましょうよ・・・
 と、言うわけで申し訳ありませんが、第48回大会では、偉い先生方への接待は、全然ありません。会長招宴の豪華な宴席も全くありません。
 でも、懇親を深めるため、実費だけで、老いも若いも交え、会員みんなで和やかに話し合う場だけは、ぜひ設けたいと考えています。老若男女合わせ気軽なパーティで、若手はベテランに学び、ベテランの先生方は苦心談を次世代+次々世代に、ぜひお話しください。もしかして埋込型補助心臓の認可が間に合えば、祝賀する場にしたいとも考えています。

 若輩者なので、もしかすると、礼を失する会になってしまうかもしれません
 あらかじめお詫びいたします。

 小泉改革や、マスコミの医療バッシング、破滅的な医療費の削減政策、地域医療の完全崩壊、地方の病院倒産・・・日本の医療制度はすでに完全崩壊し、大学の医局制度も、事実上、とっくに滅んでいると言う現状は、東北の田舎にいると、特にひしひしと実感できます。いま医学部の学生と、ちょこっとだけでも話をしてみれば、「大学の医局」と言う単語をちょいと発するだけで、蛇蝎のように嫌われる?と言う体験をした医学部の教員の先生も、決して少なくないと思われます。これが2010年の医学部の実態です。

 これから来るのは、第2次世界大戦でも生き残ったような日本の医療制度が、ついに完全に崩壊した後の、見渡す限りの焼け野原の中から、それでも立ち上がっていかなくてはならない未来へ向かう時代になるものと思われます。それでも患者さんは待ってくれません。少子化と人口減少の中で、逆境でもがんばらねばなりません。

 まずは、せめて、人工臓器に志を持ってくれたダイアモンドよりも貴重な若手を大事にしましょう

 医学と言う存在における至高の教師、究極の先生は患者さん自身ということになります。一例一例の患者さんが教えてくれる真実に、声なき声や訴えに、真摯に耳を傾けなければ医学の発展はあり得ません。本大会では、1症例1症例の個々の存在に注目して最前線の若手医師がまとめてくれたレポートを大事にしていきたいという精神で、Case report Awardを企画させていただきたいと思います。人工臓器の研究に志を持つ若手研究者の登竜門にして行きたいと考えます。
 昨年の大会では、林会長の御人徳で、たくさんのオリジナル賞候補演題が集まりました。私も審査員の末席を汚させていただきましたが、言葉の定義に従って「オリジナル」な賞を選ぼうとすると、どうしても臨床研究が不利になります。しかしながら、臨床の現場の研究がプアなところにグローバルスタンダードを念頭に置いた発展は起こり得ないのは、もちろんのことです。本大会では、新たに「臨床研究大賞」を設け、すぐれた臨床研究に対しては、これを、ぜひ懸賞していきたいと考えています。
 日本は、これからは知的財産を大事にし、クリエイティブな側面を重視しなければ、未来はないと言われます。日本発のオリジナルなアイデアは、これは懸賞して若手開発者をエンカレッジしていかなければならないと思います。
 また、許先生の御発案で、すぐれた看護研究には、Nurse Awardが新設されました。人工臓器学会では、体外循環技師の教育に力を注いできた伝統があります。優れたパラメディカル研究は顕彰していきたいと考えますので、最終日には、一日かけてセッションを縦断させたいと思います。現業のある技師さんのために週末の土曜日に予定しました。
 富永理事長の新方針の下、アジア人工臓器学会の設立が発案されています。当教室の仁田名誉教授が前回の大会で開催したアジアントラベルアワードは、アジアパシフィックトラベルグラントに拡充させました。みなさま東洋の友達に声をかけてください。

 この他、評議員の先生方のアイデアでたくさんの企画+公募のシンポジウムパネルディスカッションなどを予定しています。

 東北大学の元学長の石田先生は、「ちょっと寒いくらいの気候。ちょうど仙台くらいが、脳の活動に一番良いんだ」と、言うのを口癖にしておられました。若干、肌寒いくらいかもしれない霜月に、杜の都の青葉城の麓にて、教室並びに関連病院の先生方共々、みなさんをお待ちいたしております。よろしくお願いいたします。