Open Lecture of JSAO2010

市民公開講座

第48回日本人工臓器学会大会では、からだの中でいのちを支える機械である人工臓器を用いた最新の医療とその未来について広く皆様に知っていただくため、市民公開講座を開催いたします。臓器移植法の改正によって移植臓器による治療が身近なものになった今、人工臓器の果たす役割にも注目が集まっています。最新の医療を担う人工臓器とロボットの未来について、下記日程で講演を行います。奮ってご参加ください。

座長:

富永隆治(日本人工臓器学会 理事長、九州大学大学院医学研究院循環器外科学 教授)

講演:

深町清孝(米国クリーブランドクリニック 教授)
 「アメリカの人工臓器治療」
山家智之(第48回日本人工臓器学会大会 大会長、東北大学加齢医学研究所 教授)
 「人工臓器=機械からロボットへ」
瀬名秀明(作家)
 「人工臓器とロボットの未来


日時:平成22年(2010年)11月20日(土) 17:00~18:30 (開場:16:00)
会場:仙台国際センター 大ホール
  (仙台市青葉区青葉山)
入場料:無料(参加ご希望の方は直接ご来場ください)
主催:一般社団法人 日本人工臓器学会
協賛:仙台市教育委員会、河北新報社、東北放送
(本市民公開講座は、日本医師会生涯教育講座1.5単位認定講座です。また本講座は、平成22年度文部科学省科学研究費補助金(研究成果公開促進費)「研究成果公開発表(B)」の助成により行われます。)

お問い合わせ:

第48回日本人工臓器学会大会事務局
東北大学加齢医学研究所 心臓病電子医学分野
Tel:022-717-8517 Fax:022-717-8518
Email:jsao2010@idac.tohoku.ac.jp
ホームページ:http://www.idac.tohoku.ac.jp/jsao2010/openlecture.html

日本発世界へ人工臓器の未来

瀬名 秀明

 皆様、はじめまして。作家の瀬名秀明と申します。私はかつて研究者でしたが、現在はフルタイムの作家として活動しています。私は作家なので、講演時に自分の研究内容をプレゼンソフトで図示することや、このようなプログラム集で論文を発表することはできません。そこで私はひとりの作家の立場から、人工臓器とロボットの未来について、自由に語ってみたいと思います。
 本年、青森・静岡・島根の三か所で「ロボットと美術」展が開催され、そこではカレル・チャペックの戯曲『R.U.R.』に始まり私たち現代人がどのように機械と身体の関係性を夢想し、イマジネーションを育んできたかが巧みな構成によって示されていました。機械と身体の関係性は、つねに人間社会の倫理観を刺激し、世界を静かに変貌させてきたのだと思います。昨今は再生医療技術も世間の注目を集めていますが、そもそもSF小説の元祖であるメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』は屍体を組み合わせて生命を創造する物語であり、チャペックの『R.U.R.』でも描かれたのは機械仕掛けの人形ではなくクローン人間でした。一方で20世紀初期には彫刻家ロダンの活躍があり、未来派やロシア・アバンギャルドの芸術運動がロボット文化と重なって、今日のロボットイメージが育まれています。では機械と身体が接近し、すぐれた成果を上げつつあるこの21世紀において、私たちはいかなる想像力で新しい未来を考えてゆくのでしょうか。作家にも、また研究者自身にも、豊かな想像力が求められています。
 機械(非生命)と身体(生命)が接する部位には、つねにストレスがあり、それが機械工学や生命科学、医工学分野においてもっとも困難な課題だろうと思います。しかしそのインタフェース、あるいはコミュニケーションこそ、SFやホラーの本質でもありました。この講演では過去のSFやホラー作品を振り返りつつ、未来の新しい考え方と、人間倫理のあり方について、皆様といっしょに考えてゆきます。ゆったりとした気持ちでお楽しみいただければ幸いです。