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8/23-27/2010 第14回国際免疫学会議(神戸)に,ラボから12名の方が参加。

・済州島の研究会につづき,神戸国際会議場で開催されている標記国際会議に参加した。2009年に立て続けにメジャージャーナルに3報出た,「アレルギーのイニシエーターは好塩基球」という概念を,ひっくり返すような結果が報告されたのが印象的であった。その発表では,これまで好塩基球のマーカーとして使われているFcepsilonRIは樹状細胞にも発現しており,好塩基球のプレパレーションに混在している樹状細胞の効果を見誤っている可能性が指摘されたのである。好塩基球の重要性を全て否定するものではないが,この秋からの講義では内容を一部,見直さないといけないかも知れない。(高井俊行)

・B細胞メモリーのセッションでのB-1細胞に関する報告。AID依存的にB-1細胞がIgG+へクラススイッチし,ブーストで抗体産生が亢進することが報告された。またCSRに関しては,AIDのポイントミューテーションによりAID活性に影響を及ぼす新たなアミノ酸残基の報告があった。CSRを観測するにあたっては,AIDの発現量の増減のみならず,こういった変異が無いかも押さえておかなければならないところだろう。形質細胞分化のセッションでは,Lynが形質細胞の生存を負に制御, BCRや抑制性受容体との関連が気になった。FcレセプターのセッションではIgM-Fc受容体についての報告。機能については明確な役割は不明で,アポトーシスとの関連が示唆された。(北口公司)

・AIDに誘導されたクラススイッチやS region cleavageにトポイソメーラーゼI(TopI)が関わっているというMLを聴きに行きました。安城さんのデータに続き,B-1細胞でクラススイッチをAIDの量で観察してみようという実験をしていますが,AIDがTopIのような常に周期的に出ているような蛋白質に深く関係している蛋白質であれば,AIDをクラススイッチの指標としてどのように使ったらいいか,と考えました。(武田直樹)

・AIDはCSRやSHMに関わる他,AID欠損のB細胞ではpolyreactive抗体が高頻度にあるなど,B細胞寛容のチェックポイントにも必要な分子であることが分かった。またAID欠損患者ではCD4+T細胞が減少すること,血中BAFF濃度が増加している事も自己免疫疾患の発症につながっている。(藤村紫音)

・ジャーナルセミナーでIL10産生B細胞(B10 cell)を取り上げたこともあり、抑制性の免疫細胞に興味を持っていたので、TregやIL10産生細胞の講演及び、ポスター発表に参加した。特に興味を持ったのは、Mac-regsの報告である。報告によると、Foxp3negのmacrophageは抑制機能を持ち合わせていないが、CpG-ODN等の刺激によりFoxp3の発現を誘導するとFoxp3posの細胞同様、抑制機能を獲得すること,つまりFoxp3が免疫抑制に直接的に関与していることが示唆された。Foxp3の発現をコントロールすることで自己免疫疾患やがん免疫の新たな治療法になる可能性が考えられる。(千葉勇希)

segmented filamentous bacteria:SFBの共生がTh17を含む免疫応答の惹起に重要,という論文を考慮した形で実験を検討しているものがいくつかあった。施設による結果の違いがSFBの有無に由来する可能性があるためであり,この論文のインパクトをあらためて感じた。トレランス,免疫抑制などにおいてFoxp3に注目する演題も多くみられた。RegTに限らず,マクロファージ,myeloid suppressor cell,CD8T (suppressor T cell)など,多くのsuppressiveな細胞の抑制機能はFoxp3を発現しているとのこと。RegTのようにCTLA-4に帰着するのか,今後の展開が気になるところである。(遠藤章太)

・C57BL/6とBalb/cマウスでB-1細胞の数や性質を比較した発表においてBalbでの炎症の亢進が腹腔内のB-1細胞数が多いことに起因することが示唆された。また、B-1細胞上のIL-5Rの発現が異なることなども示された。したがってマウスの系統による差も考慮していかなければならないと考えた。(若林あい)

PIR-Bを用いての腸管免疫に関しての研究。B6およびPIR-B-KOマウスにOVAとコレラ毒素を経口的に投与し、それに対するOVA特異的IgAの産生やintestinal lamina propria (iLP), パイエル板 (PPs)そして脾臓における抗体産生細胞数を見たものではPIR-B-KOで有意に増加していました。CD11c+ DCs数に関してはiLPでPIR-B-KOの方が3倍多い以外はB6と有意差はなかったようです。御本人の話では腸管の細胞からのサイトカイン産生は有意差があるのに、末梢でのサイトカイン産生量に差がないことを疑問視されていました。
 ASTI(activator of STING)に関するもの。STINGとは細胞質内で未知のセンサーがdsDNAを認識した後にERよりrecruitされるタンパクで、innate immune responseを引き起こす重要な物質です。STINGへ伝わった刺激がTBK1、IRF3を介してINF-aの産生へとつながります。このSTINGはユビキチン化されないとシグナル伝達が起こらず、このSTINGを修飾するのがASTIというタンパクだそうです。そのほかにもautophagyタンパクであるATG9がAutophagosomeのformationのみならずSTING and TBK1のassemblyを抑制しているという発表もありました。
(三橋善哉)

『B cell depletion in SLE』自己免疫疾患の一つであるSLEとB細胞の関連についての報告.抗CD20抗体rituximabを投与すると,約1ヶ月後にはmemory・na?ve cellの減少とplasma cellの上昇が認められるが,約3年後にはplasma cellが減少する.これはrituximabがB cellの分化過程でCD20を発現するpre-B cellに作用することでlong-term effectをもたらすとともに,CD20を高発現するmemory B cellに作用することでrapid effectをもたらすためだという.また,rituximabはT細胞の作用にも影響を与え,rituximab投与後にCD69, 40L, ICSの発現がすべて低下していた.そして緩解期SLEが再発する際に,まずna?ve・T cellが増加し,その後memory B・T cellも増加することが分かっているが,これにはB細胞分化の再構成が関与しており,memory B cellがT cellの活性化を抑制し,それがrutuximabによるSLEの長期緩解につながっていると演者は考えていた. Syk-inhibitorに関しては,BCRとTLRのシグナル伝達に関わるSykを抑制することで,TRAF6を経てNFkBの発現誘導とIg産生を抑制するが,これによりIgG産生やIL-6も抑制されることを述べていた.最後にプラセボを用いたrituximabの臨床試験において良好な成績は出ていなかったが,他のB cellやT cellをターゲットとした薬剤は有効なデータが出はじめているという.
SLEの治療として,単純にB cellをdepletionさせるだけでは効果が期待できないということで免疫の奥深さを感じたとともに,B cellにおけるPIR-Bの抑制機構に関しても多角的な視点で観ていく必要があると認識した.
さらに本学会でも抑制性受容体の中でPIR-Bがkeyとなっているという報告が複数あり,このシグナル解析に一層の努力をしたいと感じた.(浅利裕佳)

8/5-6/2010 日本炎症・再生医学会(東京)に参加。ひとむかし前は,リウマチの治療といえば何とか患者さんの苦痛を軽減してQOLを改善することが目標であった。しかし現在,抗TNF-alpha抗体や抗IL-6R抗体などの生物製剤の登場によって,methotrexateを基礎薬に使いながら生物製剤を併用することで寛解が達成できるようになり,治療の目標はあきらかに,患者さんの寛解を目指すものになった。TNF-alpha,IL-6Receptor抗体(トシリズマブ),CTLA-4-Ig(アバタセプト)などが既に有効性を実証されいる。現在はさらにIFN-alpha抗体,IL-17抗体,JAK3 inhibitor, Syk inhibitor,PTPN22 (phosptatase nonreceptor 22)抗体など炎症のキー分子の生物製剤が続々と治験され,ちかいうちに市場に出ることが期待されており、これは患者さんたちにとって朗報である(高井)。

12/07/2009 Network Medicine 国際シンポジウム「Challenge to Medical Innovation」において高井教授が「A novel regulatory system for TLR9 and autoimmunity mediated by PIR-B in B-1 cells」と題して発表しました。

G-COEが掲げる目標であるネットワークメディシンによる医学の革新に沿ったテーマとして,遺伝子導入研究分野ではB-1細胞における自己免疫の制御機構としてPIR-Bが重要な役割を演じることを報告しました。

11/09/2009 CREST研究会・加齢研セミナー「B細胞の多様な局面」レポート(中村晃・今田道代)

この度のCREST研究会では「B細胞研究会」というテーマで、B細胞研究における専門の先生方をお呼びして、最新のB細胞研究についてご発表いただきました。最近の免疫学のトピックはToll-like receptorをはじめとする自然免疫系に関する研究です。一方、B細胞に関する研究は、理解が進んでおり、一見すると調べ尽くされたと思われがちです。しかしながらB細胞の「免疫記憶」や自然抗体を産生する「B1細胞の分化」などまだまだ明らかになっていないことは多く存在しています。

CREST今回の研究会にご講演頂いた先生方には、これらB細胞の研究に関して、何が明らかになっていないかを、わかりやすく説明して頂き、さらに最新の研究結果を詳細にお話し頂きました。先生方の論理的かつ熱意溢れるお話に感銘と刺激を受け、会場からは活発な質疑応答が行われました。私たちは本研究会を通じてB細胞についての理解を新たにすることができたと思います。また今後の私たちの研究にも多いに参考になり、とても楽しい研究会でした。研究会・加齢研セミナー「B細胞の多様な局面」プログラム
 日 時:平成21年11月13日(金)午後1時〜6時10分
 場 所:加齢研大会議室
・東北大学加齢医学研究所・遺伝子導入研究分野・特任助教
 北口 公司 先生
「PIR-BによるB-1細胞のTLR9シグナルの制御」
・東北大学大学院医学系研究科・呼吸器病態学分野・講師
 菊地 利明 先生
「アレルギー性気道炎症におけるOX40シグナルの役割」
・東北大学大学院医学系研究科・免疫学講座・助教
 高橋 武司 先生
・国立国際医療センター研究所・地域保険医療研究部長
 高木 智 先生
「Pre-BCR及びBCRシグナルの新規標的転写因子とその機能」
・医薬基盤研究所・基盤的研究部・免疫応答制御プロジェクトプロジェクトリーダー 
 紅露 拓 先生
「B-1細胞の前駆細胞とその分化誘導機構について」
・東北大学大学院医学系研究科・生物化学分野・教授
 五十嵐 和彦 先生
「ヘムによる液性免疫応答の制御」
・大阪大学免疫学フロンティア研究センター・分化制御研究室教授
 理化学研究所・分化制御研究グループ・グループディレクター 
 黒崎 知博 先生
「免疫記憶の謎」

10/11/2009 高井教授が香川大学「教育学部フェスティバルin 香大」−未来からの留学生−において『アレルギーのしくみ・免疫のふしぎ』と題して特別講演を行いました。

「アレルギーのしくみ・免疫のふしぎ」

東北大学加齢医学研究所 教授 高井俊行

要旨:今の大学生の人達に聞くと,およそ半分ぐらいの学生さんが「花粉症」や「ぜんそく」など、何らかのアレルギー症状を持っていることが分かります。なぜ近頃アレルギーのひとが増えたのでしょうか。一方で、以前は小さい頃に一度かかったり、ワクチンを接種しておけば大丈夫と言われていた「はしか」にかかる学生さんも増えています。一度ある感染症にかかっておけば二度と同じ病気にはならないしくみを「免疫」と言いますが、私たちの免疫のしくみは最近どうなってしまったのでしょうか。免疫は、病気を起こす怖いウィルスなどの外敵(抗原と言います)に立ち向かうための細胞を用意していますが,どうも最近これらの免疫細胞のバランスが良くないようです。講演では私たちの研究の一端を含めて、周囲の環境の抗原たちとうまくつきあうヒントを紹介したいと思います。

講演では簡単に1796年のエドワード・ジェンナーの種痘法にはじまる免疫学のおいたちを紹介したのち,

1.アレルギーはどうしておこるの?

2.アレルギーのひとはどうしてふえたの?

3.アレルギーはどうしたらなおるの?

の3項目に分けて解説しました。会場は小学生,その保護者の方,大学生,香川大の教員の皆様というバラエティに富んだ雰囲気でしたが,おおむね,わかりやすく興味深いお話だった,という感想をいただけました。写真はお世話になった香川大学教育学部の先生方,温暖化に関してたいへん興味深いお話を頂いた村山先生とのスナップです。

10/10-11/2009

片平まつりブースレポート

遺伝子導入研究分野(生命科学研究科修士2年) 松下はる香

 今年の片平まつりは『スマート・エイジング−健やかに育ち、賢く老いる−』をキャッチフレーズに2009年10月10日(土)、11日(日)の両日に開催しました。

 開催当日は秋晴れに恵まれ、たくさんのお客さんが来場しました。

 私たちの研究室は、免疫分野の観点から『自己を攻撃する病気(自己免疫疾患)の原因をさぐる』をテーマに、Auto MACS (磁気細胞分離装置)の展示と研究紹介を行いました。

自己免疫疾患と聞くと難しいイメージがあるといった声も聞かれましたが、最近では女優さんが自己免疫疾患にかかったことがメディアで話題になったことや、花粉症などのアレルギーに興味があるなど、免疫について興味、関心を抱いているお客さんが多くみられました。

 パネルの展示では、糖尿病やギラン・バレー症候群など自己免疫疾患について具体的に紹介することで、多くのお客さんに自己免疫疾患をより身近に感じていただくことができました。

また、免疫の仕組みについても理解を深めていただくことができました。

訪れたお客さんからは、自己免疫疾患の予防法や、免疫力を維持する方法についての質問が多く寄せられ、日頃から多くの人が免疫分野に高い関心を持っていると感じました。

 Auto MACSの展示では、実際の実験器具を手にして操作してもらうことで、子供からお年寄りまで、目で見て理解を深められる展示ができたと思います。特に、Auto MACSの原理を分かりやすく示した模型は子供たちに大変好評で、楽しみながら研究に触れるとても良い機会になったと思います。

 来場されたお客さんからは、片平まつりの一般公開で加齢医学研究所がどのような研究をやっているのかを知ることができ、とても良い機会になったという声が多く聞かれました。

また、スタッフ側からの意見では、同じフロアに各研究室がブースを作り展示をするという形態が、スタッフの仕事をしながらも、他の研究室の展示をまわりやすくて良かったという意見があり、他の研究室の研究内容に触れる良い機会になったと思います。

10/09/2009

第一回加齢研市民公開講座開催後記

遺伝子導入研究分野(GCOE特任助教) 北口公司

 2009年10月9日、せんだいメディアテーク7階のスタジオシアターにおいて、「愉しく老いる −高齢者が元気に暮らせる社会を目指して−」と題した公開講座を開催しました。本講演は、東北大学加齢医学研究所が主催する第一回目の市民公開講座として企画され、私たち遺伝子導入研究分野スタッフ一同も運営のお手伝いに加わりました。

 心配していた台風も前日に通り過ぎ、講演当日は風がやや強いものの、晴れ間が覗いていました。午前中から慌ただしく会場設営を行い、あっという間に受付の時間となり、聴講者の方々が続々と来場されました。会場への出入口が狭いので、聴講者の入退場には時間がかかることを予想していましたが、思いのほかスムーズに入場していただき、定刻通りに講演を開始することができました。加齢医学研究所、福田寛所長による開会の挨拶に始まり、最初の演者である加齢医学研究所教授、荒井啓行先生には、アルツハイマー病に関する話題を大変分かりやすくご説明いただきました。続いて、桜美林大学大学院教授、柴田博先生には、栄養学的な観点から健康寿命延長のコツをご講演いただきました。最後の講演では、全国民間カルチャー事業協議会顧問、山本思外里先生に、老年期を愉しく生きるための生活習慣や心構えを具体的にご教示いただきました。今回ご講演された3名の先生は、大変ご説明が旨く、専門分野が異なる聴衆へのプレゼンテーションの勉強になりました。講演が始まると私たち裏方のする仕事は殆どなくなったので、聴講者と同じく、講演を楽しませていただきました。

 本公開講座で用意した170席の聴講席は、申込み締切り日前に満席となりました。また、当日も活発な質疑応答があり、本講演に関するアンケートにも多くの方々にご協力いただきました。一般の方々の関心の高さを窺い知ることができ、研究内容を研究者以外へもわかりやすく伝えることが切望されていると感じました。今回は、初めての市民公開講座ということもあり、勝手が分からず、至らない点が多々あったかとは思います。今回の経験が、今後のより洗練された市民公開講座開催のための一助になればよいと思います。

スナップショット

講演開始直前。

高井先生は司会のお仕事もあり、大忙し。

公開講座終了後、一息つく裏方達。

9/29/2009 NM-GCOE IF成果発表会 開催

9月29日火曜日,14:00〜17:00,加齢研セミナー室(1)においてNM-GCOE主催「免疫制御とシグナル伝達」グループのIF学生成果発表会が行われました。高井教授の司会で,各研究室から計7名の大学院生の発表と質疑応答が行われました。お互いの交流はさることながら,クオリティの高い研究成果を交換し合い,有意義な時間をすごしました。