循環器疾患に随伴する出血性合併症、後天性フォンウィルブランド症候群

 フォンウィルブランド病VWD: von willebrand disease)は粘膜などから出血しやすく、一般的に先天性の出血性疾患として知られております。止血機能に重要な血漿タンパク質、フォンウィルブランド因子VWF: von willebrand factor)が量的あるいは質的異常により減少するため出血症状をきたします。VWDは発症機序によって大きく3つの病型に分類されますが、このうち2A型はVWFを特異的に切断する血漿プロテアーゼ、ADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)によってVWFの高分子量領域の多量体が過度に切断され、VWFの分解が亢進して出血しやすくなります。
 私たちは、この2A型と同様の機序にて出血性合併症である後天性のフォンウィルブランド症候群AVWS: aquired von willebrand syndrome)が循環器疾患に随伴して起こることを明らかにしました(T. Tamura et al.,J Atherosclerosis Thombosis,2015)。このような病態については医師の間で、まだあまり知られておりません。臨床上重要なのは観血的処置などに際して止血管理のためには抗凝固療法だけでなく、外科的手術や補助人工心臓のデバイス見直しなどについても検討しておく必要があるということです。
 私たちの研究チームは本研究に先立ち、多施設が共同して進める前向き臨床研究The aquired von Willebrand syndrome co-existing with cardiovascular diseases Study (The AVeC Study)を平成27年度に開始し、厚生労働科学研究費補助金・平成28年度難治性疾患政策研究事業の補助を受け、循環器疾患に随伴する後天性フォンウィルブランド症候群の実態を明らかにして参りました。

 そして平成30年度から日本医療研究開発機構・平成30年度難治性疾患実用化研究事業を受託し、循環器疾患に随伴する出血性合併症であるAVWSの診断基準・重症度分類を確立していくと共に、その予知法を開発することを目標に掲げ、医療の質向上に貢献して参ります。

VWF模式図


血管内腔に生じる”ずり応力”

 生体の血管内腔では、赤血球は中心部を比較的早いスピードで流れ、血小板や白血球などは血管壁近傍を比較的遅いスピードで流れています。このスピードの差異が血管壁の平行方向に働く”ずり応力(shear stress)”(剪断応力)を生み出しています。ずり応力は血液の粘度と血流速度に比例し、血管径に反比例します。例えばホースの先端をぎゅっと押さえて内腔を狭くすると、ホース内部を流れる水が遠くまで飛ぶように、同じ流量ならば、断面積が狭くなれば流速が増します。 【参考:日本血栓止血学会 > 用語集 > ずり応力 著者:杉本 充彦(奈良県立医科大学 血栓制御医学)

ずり応力


過度に速い血流による"高ずり応力"が原因と考えられる出血性合併症

 生体内で過度に速い血流が生じる疾患のほとんどは循環器疾患で、代表は大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)です。循環器難病である肺動脈性肺高血圧症慢性血栓塞栓性肺高血圧症閉塞性肥大型心筋症、ある種の先天性心疾患でも起こることがあります。さらに、重症心不全の治療に用いられる補助人工心臓にも随伴して起こることがあります(K. Sakatsume et al.,J Artificial Organs,2016)。
 最近、大動脈弁狭窄症に合併する消化管出血(ハイド症候群)の原因が、大動脈弁狭窄部でのAVWSであることが報告されました。このように種々の循環器疾患に伴う出血性合併症が高頻度で起こっているにも関わらず、まだ体系的な解析を伴う報告がなく、各循環器疾患ごとのAVWSの頻度や出血傾向が明らかにされおりません。
 私たちは、フォンウィルブランド因子多量体解析(von willebrand factor multimer analysis)という、超巨大分子を解析するための高度な技術を要する解析手法を用いて、分解されたVWF(高分子量領域の多量体)を定量化し、またADAMTS13活性を測定し、各診療施設から提供された様々な症例の解析にあたっております。現在、解析手法の標準化、データベース構築を積極的に進めております。


新着(活動記録)

2019年3月30日 12:10-13:00
第5回研究班会議第83回日本循環器学会学術集会にて)

場所:パシフィコ横浜 展示ホール2階会議室「E205」
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1
https://www.pacifico.co.jp/
2019年3月12日
堀内久徳教授と医学科4年生の道満剛之君が「Acquired von Willebrand Syndrome Associated with Cardiovascular Diseases」について執筆したArticle overviewがJournal of Atherosclerosis and Thrombosisに掲載されました。詳細はこちら
2018年10月31日~11月2日
26th Annual Meeting of the International Society for Mechanical Circulatory Support (ISMCS2018)にて医学科4年生の道満剛之君がポスター発表を行いました。詳細はこちら
2018年10月20日
堀内久徳教授と医学科4年生の道満剛之君が「後天性von Willebrandbrand症候群」について執筆した書籍「臨床に直結する血栓止血学 改訂2版」が出版されます。
2018年6月28日~30日
The 10th Congress of the Asian-Pacific Society on Thrombosis and Hemostasis (APSTH) にて医学科4年生の道満剛之君と、共同研究者の菅原新吾・主任臨床検査技師(東北大学病院)がポスター発表を行いました。詳細はこちら

2018年4月1日
本研究は日本医療研究開発機構より平成30年度難治性疾患実用化研究事業「高ずり応力を伴う循環器難病に随伴する出血性合併症予知法の開発」を受託し、循環器疾患に随伴する出血性合併症であるAVWSの診断基準・重症度分類を確立していくと共に、その予知法を開発することを目標に掲げ、医療の質向上に貢献して参ります。
2018年3月31日
厚生労働科学研究費補助金・平成28年度難治性疾患政策研究事業
研究開発課題「循環器難病に随伴する後天性フォンウィルブランド症候群の診断基準・重症度分類の確立」が終了しました。
2018年3月24日 12:10-13:00
第4回研究会議第82回日本循環器学会学術集会にて)

場所:リーガロイヤルホテル大阪
〒530-0005 大阪市北区中之島5-3-68 Tel.06-6448-1121
https://www.rihga.co.jp/osaka/access
2017年4月22日 7:20-8:20
研究会議(第103回日本消化器病学会総会にて)
場所:京王プラザホテル
〒160-0023 東京都新宿区西新宿2丁目2-1 Tel.03-3344-0111
http://www.keioplaza.co.jp/access/
2017年1月20日 15:00-17:30
第3回研究会議

場所:京都大学 医学部 芝蘭会館別館(国際交流会館)
〒606-8302京都市左京区吉田牛ノ宮町11-1 Tel.075-771-0958
http://www.shirankai.or.jp/facilities/access/index.html
2016年11月1日
難病情報センター公式ウェブサイトの本研究情報が更新されました。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/5312
2016年10月17日
ホームページを公開しました。
2016年3月19日
第2回研究会議
2015年12月25日
第2回VWF多量体解析標準化会議
2015年11月
第1回VWF多量体解析標準化会議
2015年4月25日
第1回研究会議