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目的・意義

図1 


血液循環系の非生理的な高ずり応力が血液中の止血因子フォンウィルブランド因子(VWF)の分解を亢進して後天性フォンウィルブランド症候群(AVWS)なる止血異常症を招き、出血、特に消化管出血を招来する。消化管出血の多くは消化管血管異形成からの出血である。一方、消化管血管異形成に関しては多くが不明なままである。AVWSが原因となるのか、もしそうであればそのメカニズムは何か?どの程度の重症度のAVWSが消化管血管異形成を形成するのか?消化管のどこにできるのか?高ずり応力を解除すれば、一旦形成された消化管血管異形成は消退するのか?出血しやすい消化管血管異形成はどのようなものか?等、多くの解決すべき課題が存在する。本研究では、2016-2017年度厚労科研費難治性疾患政策研究事業、2018-2020年度AMED難治性疾患開発研究事業での血液分野および循環器分野での成果を基盤として、循環器疾患に随伴する消化管血管異形成にフォーカスして、上記のクエスチョンに答えるべく、2021-2023年度AMED難治性疾患開発研究事業において多施設共同臨床研究を行う。具体的には、カテーテルによる大動脈弁留置術(TAVI)を行う重症大動脈弁狭窄症および左室補助人工心臓(LVAD)を植え込んだ症例を登録し、体系的、経時的に血液学的解析および内視鏡を施行する。TAVI例では主として、血管異形成の消退について、LVAD例では主として血管異形成の形成過程を観察する。さらに、多くの血管異形成写真を撮影し、AI解析によって出血を来しやすい血管異形成を明らかにする。同時に患者血液の血管内皮細胞に対する作用を解析し、血管異形成形成の分子機構を明らかにする。このような研究は、世界的にも類がなく、重要な新知見を報告できると考えている。本研究成果により、現在ほとんど実態不明の高ずり応力を伴う循環器疾患に伴う消化管出血の診療基盤を提供できると考える。


図2  

方法の概略

貧血のある大動脈弁狭窄症とカテーテルによる大動脈弁留置術(TAVI)症例

内視鏡検査・カプセル内視鏡検査による貧血と消化管血管異常の精査を行う。消化管粘膜血管異形成などを認めた場合、TAVI施行後約1年後にフォローアップ検査を行う。通常診療範囲内の採血時に追加で血液を採取し血栓止血学的解析を行う。

貧血のある僧帽弁閉鎖不全症症例

内視鏡検査・カプセル内視鏡検査による貧血と消化管血管異常の精査を行う。同時期に血液の血栓止血学的解析と、心機能の評価を行う。

消化管出血を疑う植込み型人工心臓留置症例

消化管出血が疑われる際に内視鏡検査を行い、消化管血管異常の精査を行う。この検査の4~8ヶ月後、8~16ヶ月後、30~48ヶ月後に内視鏡検査のフォローアップを行う。初回およびその後の検査施行時の前後に通常診療範囲内の採血時に追加で血液を採取し血栓止血学的解析を行う。

原因不明消化管出血症例(上下部内視鏡検査にて出血源を特定できなかった症例)

上下部内視鏡検査にて出血源を特定できなかった症例を登録し、カプセル内視鏡検査を保険診療として行う。消化管粘膜血管異形成などを認めた場合、初回検査6~24ヶ月後の脾出血時にフォローアップのカプセル内視鏡検査を行う。内視鏡検査と同時に心エコーにて弁の狭窄や逆流、短絡など、高ずり応力が生じる原因の有無などを評価する。

横断的・縦断的評価

上記で登録された症例について、経過を追跡する。各症例における臨床経過、血液学的検査値(特に多量体VWF)などを横断的・縦断的に評価する。得られた内視鏡写真を人工知能を用いて解析し、出血を来しやすい血管異形成の予知を目指す。血漿は東北大学・堀内研究室、奈良県立医大・松本研究室、国立循環器病センター・小亀研究室で解析を行う。血管新生研究を専門とする鈴木康弘博士(東北大学未来科学共同研究センター)と共に、血漿を用いたin vitro の解析で、循環器疾患に随伴する血管異形成の成立メカニズムを探索する。




国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和2年度難治性疾患実用化研究事業
高ずり応力を伴う循環器難病に随伴する出血性合併症予知法の開発



国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和3年度難治性疾患実用化研究事業
高ずり応力を伴う循環器疾患に随伴する消化管血管異形成の形成・消退の実態