移植とは

呼吸器疾患によって肺の機能が低下し、あらゆる薬物治療によってもその進行が抑えられず、病気の進行に伴って酸素吸入などの補助にもかかわらず生命が危険におびやかされるような重症呼吸不全に陥った患者さんに対する唯一の根本的治療法として肺移植があります。肺移植手術とは、悪くなった肺を提供者(ドナー)から提供された肺と取り替える手術と言えます。脳死肺移植は、脳死となった方から片側または両側の肺を、生体肺移植では一般的に2人の提供者からそれぞれ片側の下葉を提供していただいて、それを患者様の病気の肺を取り除いた後に移植します。


 肺移植は心臓、腎臓や肝臓などの移植と同様に欧米では臓器不全患者様に対する一般的な治療法として定着しています。今日では世界で年間4500件を越す肺移植手術が行われており、累計手術数は6000件を超えています。日本においても1997年10月に臓器の移植に関する法律が施行され、脳死下での臓器提供が法的に可能となりました。1998年4月に、東北大学、京都大学、大阪大学、岡山大学、2005年に獨協医大、福岡大学、長崎大学、2013年に千葉大学(再認定)、2014年に東京大学が脳死肺移植実施施設に指定されました。2019年末までに526例の脳死肺移植が施行されています。生体肺移植についても保険診療で認められているのは上記9施設であり、2019年末までに234件の生体肺移植手術が行われました。