- 【基礎研究】低分子量GTP結合蛋白質Ralに関する研究(特に癌との関連)
- 【基礎研究】細胞内エネルギー感知システムに関する研究
- 【基礎研究】好中球NETs形成やその過程に重要な蛋白質シトルリン化に関する研究
- 【基礎研究】二型糖尿病治療薬メトホルミンの作用メカニズムに関する研究
- 【臨床研究】循環器疾患に随伴する後天性フォンウィルブランド症候群に関する研究
研究背景
メトホルミンmetformin (図1)は古くから用いられている二型糖尿病治療薬である。
近年、血糖降下作用に加え、抗がん作用や心血管障害の予防作用など(図2)を持つことが明らかにされ、注目を集めている。
また、これにはメトホルミンの抗炎症作用が関与すると考えられている。メトホルミンはAMPK (AMP-activated protein kinase) やmTOR (mammalian target of rapamycin) などの分子を標的とすることが知られているが、抗炎症作用に関しては他の標的が存在すると考えられた。
成果 (Horiuchi and Sakata et al, J Biol Chem, 2017)
本研究室ではメトホルミンの新規結合タンパク質の同定を試み、HMGB1(high mobility group box 1) を同定した(図3)。
HMGB1 は核内タンパク質であるが、炎症やネクローシスに伴い細胞外へと放出され、炎症反応を増悪させる因子(DAMPs: Damage-Associated Molecular Patterns) である。メトホルミンが細胞外のHMGB1 に結合することでその炎症惹起活性を抑制していることを明らかにした(図4, 5)。
また、メトホルミン結合部位として、HMGB1 のC末端領域に存在するacidic tail domainを同定した。この成果はメトホルミンの細胞外標的タンパク質の初の報告である。
現在の研究・今後の展望
炎症は心血管障害やがんの進展に深く関わる事象である。メトホルミンによるHMGB1 の抑制は、これらの病態にも深く関与している可能性がある。今後、これらの病態モデルマウスを用いた解析が必要とされる。また、HMGB1 のメトホルミン結合部位と類似の配列を持つ新たなメトホルミン結合タンパク質の同定や、細胞内HMGB1に対するメトホルミンの作用の解析を進行中である。